ウ○コ

私は知っていた。
一歩でも、いや、一寸でも動いたなら、その慟哭が私の御する所から溢れ出してしまう事を。
しかし、私はとどまるわけにはいかなかった。
私は、その身に天寿を全うしきらんとする古木のような静寂を纏わせてみたところで、
それが私を私の望む所へ導きたまう唯一の蜘蛛の糸ではない事を誰よりもその身に感じ取っていたのである。
私は為すべきをした。
刻を同じくして、その慟哭が私にこの世のあらゆるものがもつものよりも深い悲しみと灼けるような苦しみを与えんと、胎動を始めたのを感じた。
そのとき、僅かだが、確かに私の焦りが私のおもてを揺るがした。
慟哭も全く当たり前のようにそれを見逃すことはなかった。
彼の者は、天が与え賜うた機を逃がすわけもなく、その力も蓄え終わらんうちに、彼の持てる物を発露させた。
全く、毛髪の一本の隙も存在し得ないほどの間であったに違いない。
審判は下された、私の私を信じて疑わない心が彼の者を退けた瞬間だった。
私は脱糞を免れたのだ。
ブルーレットのさわやかなせせらぎだけが私の凱旋を見守っていた。