ゲーセンがつぶれた

 数年来通っていたゲームセンターが潰れることになった。

 最後の大会にはひとがあつまらず、みかけたことのあるひとばかりだった。集まった1人に、まだ数えるほどしかあったことがない友人になったばかりの人がいた。ただ、僕は彼の人となりをそれなりに知っていたと思う*1彼は大胆でなく、思い切りもよくないが、よくこらえ、くじけない。

 間違いなく今日で今生の別れだった。多生の縁とは言うが、今生ではこれきりだ偶然会えたとして、数日、数カ月ならばおもいだしもするだろうが、1年もたってしまえば顔も思い出せないだろう。いまやだれもが窓口となるような連絡先をもっていて、別れはファンタジーな存在であるが、僕は数回しかあったことのない彼の連絡先をしらないし、名前もしらない。彼のキャラクターに表示されたプレイヤーネームしかしらない。

 「あ、自分そろそろバイトなんで」「それじゃあ」 と挨拶をして、彼と僕とは今生の別れを果たした。これまで、自分の存在感に、いままで自分と親しくなってくれた人は手持ち無沙汰のあまり手遊びで影絵をはじめてしまったときくらいにはふっと自分を思い出してくれるのではないかというくらいの自信を持っていたが、それがどれほど自意識過剰であったかと思う。彼は二度と僕を思い出しはしないし、きっと僕も忘れるに違いない。強い酒をあおった時の喉の熱さのような友人だった。

 二度と会えないとわかってこれほど安易で姑息でアドホックな関係であったのかと知った。彼にまったくもってこれっぽちも何の影響を及ぼさなかったという確信に感動すら覚えた。

 

*1:ゲームを通じてではあるが正しいはずだ